東京都内の歯科医院に迫る危機とチャンス
歯山 太郎(理事長)
2024年歯科医院の倒産・休廃業件数が年641件(2024年実績)と過去最多になりそうだって聞きました(出典:帝国データバンク)。
歯谷 歯奈子(院長)
そんなに!?
虫歯治療の減少や人材不足、マイナンバーカードを使ったオンライン資格確認の設備負担…課題が多いですよね。そんな中、新院OPEN・・・。
井水 朋子(コンサル)
そうした厳しい現実がある一方で、年商1億円超えの歯科医院や自由診療を柱に大きく伸びている医院も少なくありません。
そうした医院に共通していることは、医院の強みを活かして差別化しているという点です。
新院の出店計画は簡単に立てましたが、マーケティングの視点からもう少し深く分析して、差別化できるようになりたいですね。
では、現状分析の全体像と手法について紹介します。
歯科医院の現状分析
3ステップで経営状況を可視化
- 情報収集
- 地域人口動向、競合医院数、患者アンケート結果など
- 売上データ(保険/自費の比率、科目別売上)
- 分析
- 内部環境(自院の強み・弱み)と外部環境(競合、地域需要)を整合しながら評価
- 戦略策定
- 得られた示唆をもとに、設備投資や人材育成、マーケティング施策を実行
新院OPENの場合、売り上げデータはありませんので、目標数値を使いましょう。
データに基づいて戦略を決めていくんですね。
新院OPENには欠かせませんね。
競争が激しいエリアの歯科医院は、競合の動きが激しく、変化が多いので、定期的に分析するといいですね。
私の知り合いの歯科医院は1年放っておいたら、選ばれる歯科医院から、選ばれない歯科医院になってしまっていましたので・・。
なるほど、当院でも定期的に分析したいですね。
自院の強み・弱みを明確化
- 人材不足や設備更新費に苦しむ歯科医院が増加
- 「うちの医院は新患が少ない…」と嘆く院長も多いが、実際にどの診療メニューで利益を上げているか、どの年齢層が多いかを把握できていないケースも
- 現状分析で「自費診療比率アップ」「ホワイトニング特化」「訪問診療参入」など、具体的戦略に繋げやすい
競合他院の戦略理解
- 都内では駅前の大型医院が広告に力を入れ、広範囲から患者を集めている例がある
- 競合が「インプラント」や「矯正」に強いなら、差別化のため「小児歯科」や「訪問診療」に注力するなど選択肢を検討
現状分析をちゃんとやってないと、“もったいない投資”をしちゃうかも…。せっかくCTを導入したのに、地域にインプラント需要が少なかったとか。
そうそう。経営資源をかける先を間違えると、さらに倒産リスクが高まります。
各分析手法の紹介 ─ 特徴と活かし方
ここでは代表的な4つの分析法(SWOT分析、3C分析、ユーザーインタビュー、患者アンケート)をまとめ、
どんな歯科医院がやるといいのか、また、その分析をする意義紹介します。
4-1. SWOT分析
- 手法概要
- S(Strengths)/W(Weaknesses)/O(Opportunities)/T(Threats)
- 自院の強み・弱み(内部要因)と外部環境の機会・脅威をクロスして戦略を導く
- どんな歯科医院におすすめ?
- 「自院の強みがよく分からない…」と思う医院
- 新規開院や大きな設備投資を検討しているが、方向性が定まらない理事長や院長
- 都内のように外部環境が変化しやすいエリアで、機会(O)や脅威(T)を整理したい場合
- 経営資源をかける意義(活かし方)
- 強み×機会を組み合わせて「成功戦略」を見出せる
- 弱み×脅威で想定リスクに備え、倒産や休廃業を防ぐ
- 全スタッフでSWOT表を共有することで、チームが同じ方向を向ける
関連リンク
・歯科医院のSWOT分析とは?
3C分析
- 手法概要
- C1: Customer(患者)/C2: Competitor(競合)/C3: Company(自院)
- 患者ニーズ、競合の特徴、自院のリソースを三方向から分析
- どんな歯科医院におすすめ?
- 「他院との差別化ポイントを見つけたい」理事長・院長
- 価格競争に巻き込まれずに、自費診療を拡大したい医院
- 新規開院・分院展開を検討しており、競合状況と患者需要を精査したい場合
- 経営資源をかける意義(活かし方)
- 自院の強みを再認識し、“どの患者層”にアプローチすべきかを明確にできる
- 競合医院の成功モデルを参考にしつつ、自院の独自性を打ち出す
- 狙い目の保険/自由診療メニューを特定し、集患施策を最適化
関連リンク
・歯科医院の3C分析とは?
ユーザーインタビュー
- 手法概要
- 患者(または潜在患者)への直接インタビュー
- 「なぜこの医院を選んだか?」「不満や要望は?」を深堀り
- どんな歯科医院におすすめ?
- 「定量データだけでなく、リアルな声を知りたい」医院
- 新しい治療メニュー導入前に、患者がどう感じるか確かめたい場合
- 患者満足度向上に本気で取り組む医院
- 経営資源をかける意義(活かし方)
- “想定外の患者ニーズ”を発掘できる(例:痛みへの恐怖心、治療説明の不足)
- スタッフ対応や院内の雰囲気など、定性的な要因を可視化し、サービス改善につなげる
- アンケートでは得られない深いインサイトが得られ、口コミ評価の向上に直結
関連リンク
・歯科医院のユーザーインタビューとは?
患者アンケート
- 手法概要
- 新規・既存患者に対し、紙やWebでアンケートを実施
- 診療満足度、医院選びの理由、改善要望などを選択式・記述式で集計
- どんな歯科医院におすすめ?
- 規模が大きく、多数の患者の意見を一度に集めたい医院
- 定期的な満足度調査で、経年変化を追いかけたい場合
- キャンペーンなどと連動させ、回答率を高めたい医院
- 経営資源をかける意義(活かし方)
- 大量の定量データから統計的傾向を把握できる(例:通院距離、年齢層、リピート意向)
- 改善施策の効果測定に再度アンケートを実施→PDCAサイクルに組み込む
- アンケートで得た声をHPやSNSで紹介し、透明性や親近感を高める
関連リンク
・歯科医院の患者アンケートとは?
まとめ ─ 前向きな分析で生き残りと成長を両立
- 現状分析が必須な理由
- 都内で歯科医院が抱える倒産リスク増大や経営課題を踏まえ、自院の強み・弱みと外部環境を把握する必要がある
- 情報収集→分析→戦略策定の流れ
- 売上データ、患者アンケート、競合調査などから多角的に経営を見直す
- 4つの分析手法(SWOT・3C・ユーザーインタビュー・患者アンケート)
- それぞれおすすめの医院像と活かし方を紹介
うちみたいに患者層がバラバラな医院は、まず患者アンケートからやってみようかな。患者さんが何を求めてるのか把握しやすそう。
私はSWOT分析で、“差別化するための強みは何か”をスタッフみんなと話し合いたいです。新しい治療メニューを導入するか、DX化に投資するかも検討したいし。
いいですね。前向きに分析して、倒産リスクが叫ばれる時代でも『儲かる歯科医院』を目指しましょう。次は各分析手法の詳細記事を参考にしてくださいね!