ユーザーファーストなウェブサイト設計と製造業が意識すべき3つのポイント

ユーザーファーストなウェブサイト設計と製造業が意識すべき3つのポイント
目次

なぜ「ユーザーファーストな設計」が必要なのか?

受託加工など自社製品を持たない製造業のウェブサイトは、何を載せれば良いのか分からないまま、会社概要や設備紹介で終わっているケースが多いです。
しかし、昨今はBtoB領域でもインターネット検索から工場や加工会社を探す顧客が増え、ウェブサイトが最重要の営業ツールになりつつあります。
技術力や設備をアピールしても、顧客の視点(ユーザーファースト)で設計されていなければ情報が伝わらず、問い合わせや商談に繋がらない可能性が高いのです。

このページを読むことで、
「入口ページ」「問い合わせ導線」「既存顧客・商談中顧客向けコンテンツ」という3つの柱から、製造業サイトをユーザーファーストに改善する手順がつかめます。

ユーザーファースト設計を怠ると、どうなる?

よくある残念なホームページ

  • 「自社の優れた技術」を大きく書いているが、顧客が読んでも自分事化できず、反応されにくい。
  • 本当に検索されるキーワードを想定しておらず、入口ページに辿り着く人が少ない。
  • 技術ページは見てもらっても、問い合わせにたどり着く人が少ない。
  • 問い合わせにたどり着いても、送信される数が少ない。

これらを放置すれば、価格競争に巻き込まれたり、大手に先を越されたりといった事態に陥りがち。
そこで、ユーザーファーストを意識し、目的別にサイトを構築し直すことで、問い合わせ増や差別化を図りましょう。

ユーザーファーストなウェブサイト設計とは

ユーザーファーストなウェブサイト設計とは、顧客が「見やすく、使いやすく、知りたい情報にすぐたどり着ける」ように、顧客の視点に立ってウェブサイトを構築することです。

製造業のウェブサイト、特に自社製品を持たない受託製造業の場合、この視点が重要です。
顧客は「自社の課題を解決してくれる企業かどうか」を知りたいのであり、企業側の技術自慢や抽象的なPRには興味を示しません。
顧客の課題やニーズ(検索キーワードに表れます)を的確に捉え、具体的な解決策や事例、数値データなどを分かりやすく提示することが求められます。

例えば、「高精度な加工技術」と漠然と書くのではなく、「〇〇(材質)の△△加工で、寸法精度±0.005mmを実現」と具体的に書いたり、「自動車部品メーカー様のコスト削減事例」といった顧客目線の事例紹介を充実させたりすることが重要です。

さらに、サイト内の導線を整理し、顧客が迷わず目的の情報にたどり着けるようにすることも大切です。
顧客視点で徹底的に「分かりやすさ」を追求することが、最終的にはウェブサイトからの問い合わせ増加、ひいては受注獲得に繋がります。

ユーザーファーストを実現するために重要度の高い3つの柱を紹介します。

  1. 入口ページの設計
    (検索流入を意識した、ペルソナの検索キーワードに合致するページ作成)
  2. 問い合わせ(コンバージョン)への導線設計
    (入口ページからスムーズに問い合わせ・資料請求へ誘導)
  3. 既存顧客・商談中顧客向けコンテンツ
    (会社紹介、詳細技術情報、FAQなどで信頼性向上や追加発注につなげる)

ここからは順番に1から紹介します。

1つ目の柱:入口ページの設計

なぜ「入口ページ」が重要?

一部の人は「○○材 加工」「△△部品 短納期 試作」「インコネル718 切削」など、ニッチで具体的なキーワードで検索し、サイト内の特定ページへダイレクトに流入します。
そこで、検索意図に合致したページが用意されていれば、「ここなら私の問題を解決してくれそう」と感じてもらえる可能性大。
一方、漠然と企業紹介だけのトップページでは、すぐに離脱される恐れがあります。

新規顧客にとっては「自分事化」で「問題解決できる」と思ってもらうことが大事

ロケット開発会社の自動車メーカーでそれぞれインコネル718の加工を探している想定人物の例です。

想定人物ウェブサイト掲載例読み手の反応しやすさ
ロケット開発会社 技術者 鈴木(45歳)
技術詳細重視
「インコネル718の精密加工、寸法精度±0.003mm、短納期対応。宇宙航空分野やロケットエンジン部品など多数実績あり!JIS Q 9100認証取得済み。」: 必要としている情報が掲載され、自分事化しやすい。
大手自動車メーカー 調達担当 山田(35歳)
実績&信頼重視
「インコネル718の精密加工、寸法精度±0.003mm、短納期対応。宇宙航空分野やロケットエンジン部品など多数実績あり!JIS Q 9100認証取得済み。」: 自動車メーカーの人物向けに宇宙航空分野の事例が紹介されている状況。読み手にとっては自分事化されにくい。

ポイント:
同じホームページの内容でも、読み手によって自分事化されやすさは異なります。
検索意図だけでなく検索者の状況に合ったバリエーションを用意することで、
さらにリンクを設け、「他の材質も見る」「試作事例を見る」などの導線を用意すれば、サイト内回遊が高まり問い合わせにつなげやすくなります。

2つ目の柱:問い合わせへの導線設計

「ここに頼めるかも」と思ってもらったその先に問い合わせボタンがあることは重要ですが、問い合わせボタンをクリックするまでにどんな情報を見せるかも重要です。

問い合わせまでに払拭すべきことを掲載しつつ、問い合わせページに誘導しましょう。

受託製造業が問い合わせまでに払拭すべき3つのハードルとは

BtoB製造業の担当者が外注先候補に問い合わせをする上でハードルとなる要因は、大きく分けると、「情報不足による不安」「心理的な障壁」「手続き・社内調整の煩雑さ」 の3つです。

1. 情報不足による不安を払拭する

  • 技術力・実績への疑問:
    • 自社の要求仕様(精度、材質、加工技術など)を満たせだろうか?
    • 具体的な加工事例が少なく、自社の製品に適用できるだろうか?
    • 他社よりもこの会社を選ぶべき優位性があるだろうか
  • 品質・納期への懸念:
    • 品質管理体制(ISO認証など)や検査体制は十分だろうか?
    • 自社の生産計画に組み込めるだけの納期対応ができるだろうか?
    • 過去のトラブル事例や、それに対する対策は十分だろうか?
  • 価格への不安:
    • 費用感はあっているだろうか?

情報不足による不安を解消するために
技術力は数値と具体例で示しましょう。「高精度」ではなく「寸法精度±0.005mm」と具体的に。「〇〇部品の試作期間を50%短縮」のような事例も効果的です。品質管理はISO認証や検査体制を、納期は「試作品 最短3日」と目安を明示。価格も「〇〇加工 〇〇円~」や概算見積もりで透明性を高めましょう。

2. 心理的な障壁を払拭する

  • 問い合わせへの遠慮:
    • 「まだ具体的な案件ではないのに、問い合わせても良いのだろうか…」
    • 「問い合わせたら、しつこく営業されるのではないか…」
    • 「技術的な質問をしたら、笑われるのではないか…」
  • 情報開示への抵抗:
    • 自社の機密情報(製品情報、図面など)を提供することに抵抗がある。
    • 競合他社に情報が漏洩するリスクを懸念する。
  • 担当者の負担感:
    • 問い合わせフォームの入力項目が多く、面倒に感じる。
    • 問い合わせ後のやり取り(メール、電話、打ち合わせなど)に時間が取られる。

心理的な障壁を取り除くために
「お気軽にご相談ください」と、問い合わせへのハードルを下げましょう。お客様の声で「短納期で助かった」など、具体的なコメントを掲載し信頼感を高めます。FAQで疑問に先回りして答え、技術ブログや社員紹介で「人」を見せ、親近感を醸成することも有効です。

3. 手続き・社内調整の煩雑さを払拭する

  • 社内承認の必要性:
    • 上司や関係部署への説明、承認が必要。(特に、新規取引先の場合)
    • 社内規定により、相見積もりが必須。
  • 契約手続きの煩雑さ:
    • 秘密保持契約(NDA)の締結が必要。
    • 取引基本契約の締結が必要。
  • 購買システムの制約:
    • 指定の購買システムへの登録が必要。
    • EDI(電子データ交換)への対応が必要。

手続き・社内調整の煩雑さを軽減するために
問い合わせから納品までの流れを図解するなど、視覚的に分かりやすく提示しましょう。各段階で必要な手続きや書類、期間の目安も明示。会社案内や技術資料をダウンロード可能にし、社内共有を容易に。秘密保持契約への対応も明記し、安心して相談できる環境を整えましょう。

問い合わせまでの導線で伝えるべきこと

これらのハードルを下げるためには、問い合わせまでの導線の中で以下を伝えておくと効果的です。

問い合わせまでの導線で伝えるべきこと(まとめ)

  • 技術力や実績に関する詳細情報(詳細な技術情報、加工事例、お客様の声など)
  • 品質管理体制や納期に関する情報(ISO認証、検査体制、納期シミュレーションなど)
  • 価格感(費用感がわかるものなど)
  • 信頼性を高めるもの(情報セキュリティ対策、各種認定、社会的証明など)
  • 情緒的な姿勢(オープンマインドで挑戦する姿勢など)

また、実際に問い合わせフォームを送信した後の対応(迅速な回答、丁寧な説明、柔軟な対応など)も、顧客の不安を解消し、信頼関係を築く上で重要です。

3つ目の柱:既存顧客・商談中顧客向けコンテンツの充実

なぜ新規だけでなく、既存や商談中の顧客を意識する?

ユーザーファーストな設計は、「初めて来る人」だけでなく、既に取引している顧客がサイトを再訪した際にも利用しやすいことがポイント。
また、商談中の顧客が「もっと詳しい技術情報ないか?」とサイトをチェックする場合に、回答を見つけられれば契約の後押しになる可能性が高いです。

既存顧客・商談中顧客向けコンテンツ例

  1. 会社紹介の詳細版
    • 社内設備や品質管理体制、認証取得状況など深い情報
    • SDGs/CSR取り組み、下請法対応なども明示しておく
  2. よくある質問(FAQ)・技術資料ダウンロード
    • 納期や検査体制、品質保証、メンテナンス体制など既存顧客が知りたい項目
    • 設備カタログや図面仕様書をPDFで提供する場合も
  3. お客様の声・ユーザーレビュー
    • 実際にリピート発注している顧客のコメントで、信頼度アップ
    • 新規顧客にも響くので一石二鳥

これらの情報は、トップページにはあまり載せないことが多いですが、商談中の相手にはURLを直接案内すると効果的です。

まとめ:3つの設計を押さえて、ユーザーファーストな製造業サイトに進化させよう

受託製造業では、入口ページの設計が曖昧だったり、問い合わせ導線が分かりにくかったり、既存顧客向けの情報が足りなかったりと、さまざまなもったいない点が潜んでいます。
そこで、

  1. 入口ページ(検索流入を意識、ペルソナ&ロングテールSEOを反映)
  2. 問い合わせ導線(問い合わせフォームまでの過程で伝えるべきことを伝える)
  3. 既存顧客・商談中顧客向けコンテンツ(企業信頼度アップ、追加発注の後押し)

という3つの柱を整えていくことで、ユーザーファーストが実現し、問い合わせや成約に繋がりやすいサイトができあがります。

まずは、今のウェブサイトを3つの柱の観点で見直してみてください。
入口ページは顧客が検索しそうなキーワードに合致しているか、導線はシンプルか、既存顧客の課題を解決する情報はあるか…すぐに改善できるポイントが必ず見つかるはずです。

ウェブマーケター

疑問点や具体的なリニューアル計画について相談したい場合は、お気軽にお問い合わせください。ユーザーファースト設計を武器に、競合に差をつけましょう。

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