サイトの表示が遅くて困っています。
「遅延読み込みを導入すれば改善する」と聞いたのですが、一体どういうことでしょうか?表示を遅くすることになりませんか?
よくある疑問ですね。
実は、遅延読み込みは、ウェブページの表示速度を改善するための技術なんです。この仕組みについて詳しく解説していきましょう。
遅延読み込みとは
遅延読み込み(Lazy load)とは、ウェブページのうちユーザーがすぐに必要としない情報の読み込みを遅らせる技術です。
そうすることで、ウェブページの読み速度を高めてユーザー体験を向上させます。
ウェブページの表示速度が重要な理由
ウェブサイトの表示速度は、ユーザーの離脱率、コンバージョン率、そしてSEO評価に大きく影響します。
特に、モバイルユーザーの53%は、ページの読み込みに3秒以上かかるとサイトを離脱するというデータもあります。
データ参照(英語)DoubleClick by Google: Mobile page speed and its impact on conversion
ウェブマーケ担当者向け:高速化と遅延読み込みのビジネスインパクト
なぜページ高速化が重要なのか?
コンバージョン率(CVR)と売上向上
表示速度の遅さは、ユーザーの離脱を招き、CVRの低下に直結します。大手ECサイトの実例では、ページ表示速度を1秒改善することで、モバイルでのコンバージョン率が最大27%向上したケースもあります。
関連記事:アクセス解析で見るべき重要指標|集客とCVの改善に効く数値
SEO評価への影響
2021年以降、Googleはページ体験(Core Web Vitals)をランキング要因として重視しています。特にLCP(Largest Contentful Paint)は2.5秒以内が推奨され、これを超えるとSEO評価に影響する可能性があります。
関連記事:初めての技術的SEO入門|やさしく学べるWebサイトの基礎知識
ブランドイメージの向上
「ユーザーを待たせないサイト=優れたUX」という印象を与えられます。
顧客満足度やリピート率向上にも寄与します。
遅延読み込みの効果を最大化する
ファーストビューの軽量化
画面上部(ファーストビュー)の表示を0.5秒以内に抑えることで、直帰率を平均20%低減できるというデータがあります。
画面外にある画像や動画は、ユーザーがスクロールしたタイミングで読み込みを開始します。
これにより不要なリソースを最初に読み込まず、サイトを表示するまでの時間を短縮できます。
ユーザーの通信負荷も軽減されます。
関連記事:ホームページの表示速度を改善する方法
重要な計測指標とツール
Core Web Vitals
指標 | 説明 | 目標値 | 重要度 |
---|---|---|---|
LCP (Largest Contentful Paint) | 主要コンテンツの表示速度 | 2.5秒以内 | ★★★★★ |
FID (First Input Delay) | 初回操作(クリック等)に対する応答速度 | 100ミリ秒以内 | ★★★★☆ |
CLS (Cumulative Layout Shift) | 表示位置のズレ量。広告や画像の読み込みによるレイアウトの不安定さ | 0.1以下 | ★★★★☆ |
計測ツール
- Google PageSpeed Insights: モバイル・PC別のスコアと改善提案を確認できます
- Lighthouse: より詳細な開発者向けパフォーマンスレポートを取得できます
- Search Console: 実際のユーザーデータに基づく体験指標を確認できます
これらのツールで測定を行い、高速化施策の効果検証を繰り返すことが大切です。
開発者向け:遅延読み込みの実装方法
開発者向けの具体的な実装例を紹介
リソースの読み込み順序を最適化する方法は主に2つ
レンダリングブロックを減らす 主要コンテンツを早く表示するために、CSSやJavaScriptの読み込みを適切に配置します。
不要なリソースを後回しに 本当に必要になるタイミングでのみ、画像やサードパーティスクリプトを読み込むことで初期表示が軽快になります。
遅延読み込みの基本的な実装例
画像の遅延読み込みをするには、HTML5のloading=”lazy”を利用します。
<!-- 基本的な実装 -->
<img src="image.jpg" loading="lazy" alt="説明文" />
<!-- srcsetを使用した実装 -->
<img src="small.jpg"
srcset="medium.jpg 1000w, large.jpg 2000w"
loading="lazy"
alt="説明文" />
iframeや動画でも、Loading=”lazy”を利用します。
YouTubeなど外部動画埋め込みも同様に属性を設定することで、初期ロードを軽くできます。
<!-- YouTube動画の遅延読み込み -->
<iframe src="https://www.youtube.com/embed/VIDEO_ID"
loading="lazy"
width="560"
height="315"
title="YouTube動画"></iframe>
関連記事:ホームページの画像最適化完全ガイド|パフォーマンスとSEOを向上させる方法
具体的にどんな手順で始めればいい?
- 現状の速度計測
- PageSpeed InsightsやLighthouseでサイトの現状を把握。
- 遅延読み込み導入
- まずは画像や動画を遅延読み込みに切り替える。
- JSやCSSの最適化
- JSは
defer
やasync
、CSSはCritical CSSをインライン化し、不要な部分は遅延読み込みにする。
- JSは
- 効果測定
- 改善前後のサイト速度を再計測し、KPI(直帰率やCVR)にどう影響するか確認。
開発中級者向け:より高度な高速化テクニック
開発担当者向けの具体的な方法を紹介します。
リソース読み込み順序の高度な最適化
- Preload・Prefetchの活用
- 重要なフォントやメイン画像などを先読みすることで、ユーザーが必要とするタイミングに備える。
- 例:htmlCopy
<link rel="preload" href="/fonts/myfont.woff2" as="font" type="font/woff2" crossorigin>
- Critical Rendering Pathの最適化
- ページ表示に必要な最小限のCSSをインライン化し、それ以外は遅延読み込みすることで、レンダリングをブロックしない設計にする。
- HTTP/2, HTTP/3対応
- 同時接続が増えるHTTP/2以降のプロトコルを利用することでリソースの並列読み込み効率が上がる。
- CDNの活用
- 地理的に近いサーバーから配信し、遅延を減らす。
サードパーティスクリプトの取り扱い
- 非同期化と遅延読み込み
- 広告タグや解析タグを
async
やdefer
で読み込み、レンダリングをブロックしないようにする。
- 広告タグや解析タグを
- Tag Managerなどでの制御
- タグが増えすぎないように定期的にレビューし、不要なタグを削除。また、トラッキングに影響しない範囲で遅延読み込みを行う。
開発体制と継続的最適化
- CI/CDパイプラインに組み込み
- コードの変更があればLighthouseなどで自動テストを回し、パフォーマンス悪化を即座に検知。
- A/Bテストによる検証
- 高速化施策がCVR向上などのビジネス成果につながるかを実データで検証し、経営層・他部署を説得する材料にする。
よくある質問と回答
高速化施策は実際に売上やCVRにどのくらい効果がありますか?
サイトによって違いはありますが、表示速度が1秒縮まるだけで直帰率が大幅に減少するケースもあります。
実際、大手ECが高速化でCVRの数%〜十数%改善という事例は多数存在します。現状のサイト速度を計測し、改善後にA/Bテストで検証することで、具体的な効果を数値化できます。
遅延読み込みが実装できたかどうかは、どうやって確認しますか?
遅延読み込みが実装できたかを確認するには、ブラウザの開発ツールで「Network」タブを使用します。
タブを開いた状態で、該当のウェブページを読み込むと、読み込まれたファイルの一覧が時系列で表示されます。
Networkタブにおいて、該当する画像ファイル名やJSファイル名で検索して使用すると便利です。
高速化に投資する価値を、社内でどう説得すればいいですか?
「ユーザー満足度の向上」→「離脱率やCVRへの影響」→「売上向上やリード獲得増」という因果関係をデータで示すのが効果的です。
PageSpeed InsightsやCore Web Vitalsの改善例、他社事例などを活用し、投資対効果(ROI)を明示するようにしましょう。
遅延読み込みを導入すると、画像が後から読み込まれて見にくくならない?
ファーストビューに必要な画像は従来どおり先に読み込まれるため、ユーザーが画面外の画像に到達するまでは必要ないリソースを読み込まないだけです。
むしろ不要な読み込みが減るため、最初に見える部分は素早く表示されます。
SNSウィジェットや広告タグを遅延させて、解析データや広告配信に影響はないですか?
トラッキング精度に影響が出る場合もありますが、ページ読み込みと同時でなくても計測は行われるケースが多いです。
Googleアナリティクス(GA4)などは、ページ表示後すぐに実行されなくてもある程度計測可能です。
ただし、広告タグによっては表示までの時間がズレると収益に影響する可能性があるため、事前にテストして確認しましょう。
高速化が進むとユーザー体験は向上するけど、そのROIをどう計測すればいい?
KPI設定: 直帰率、平均セッション時間、CVR、売上など
ベースライン計測: 高速化前の指標を数値化
施策実施: リソース読み込み順序最適化や遅延読み込みを導入
A/Bテストまたは期間比較: Before/Afterを比較し、改善幅とその金銭的価値を試算
継続モニタリング: 施策を一度で終わらせず、継続的に最適化していく
速くするためには、具体的にどれくらいの費用や開発工数がかかるの?
サイトの現状と目標水準によって異なります。
小規模: 画像圧縮や遅延読み込み導入、プラグイン整理程度なら数日〜数週間で対応可能
中〜大規模: CDN導入、フロントリニューアル、CI/CD整備なども含めると数ヶ月かかることも
ただ、UXやCVRへの効果を考えれば投資対効果は高いケースが多いです。
まとめ:今日から始める高速化対策
チェックリスト
- PageSpeed Insightsでサイトの現状ウェブページ読み込み速度を確認してみよう
- 遅延読み込みが実装されているか、確認してみよう
高速化は一度きりの対策ではなく、継続的な改善が必要です。
まずは小さな改善から始めて、徐々に最適化の範囲を広げていきましょう。