顧客に態度変容を促すためのメッセージはどう決める?~精緻化見込みモデルの紹介と説得しやすいメッセージ~

人が説得的なメッセージに触れた時、どのように態度変容を起こすかを極めた理論「精緻化見込みモデル」について解説します。
精緻化見込みモデル(ELM)とは
1980年代にリチャード・ペティ(Richard E. Petty)とジョン・カシオッポ(John T. Cacioppo)によって提唱されました。
精緻化見込みモデルとは、人が情報を受け取ったとき、それをじっくり深く考える場合と、あまり深く考えず直感的に判断する場合があるという理論です。
① 中心ルート(Central Route)
商品やサービスについて詳しく考え、メリットやデメリットを比較して判断する。
例:高価なパソコンを買うときに、性能やレビューをよく調べる。
② 周辺ルート(Peripheral Route)
深く考えずに、直感や感覚、簡単な印象で判断する。
例:好きな芸能人が宣伝しているお菓子を、深く考えずに買う。
精緻化見込みモデル(ELM)とマーケティング
マーケティングでは、お客さんがどちらのルートで考えているのかを理解し、それぞれに合った方法で情報を伝えることが重要です。
- 中心ルート向け:詳細で具体的な情報やデータを提供。
- 周辺ルート向け:印象的で魅力的なビジュアルやキャッチコピー、人気のある人物を起用。
ELMの中心ルートとは
精緻化見込みモデルにおける中心ルートでは、受信者がメッセージの内容を深く考え、注意深く吟味します。
情報を受け取った時 | しっかり吟味し、時に批判的に吟味します。 |
---|---|
態度変容の成否をにぎる鍵 | 態度変容の成否は、メッセージの質、論理性、説得力に大きく左右されます。 |
態度変容の持続性 | 中心ルートで形成された態度は、持続性が高く、後からの反論や説得にも抵抗力 があります。なぜなら、熟慮の末に自分の考えとして受け入れた態度だからです。 |
起こりやすい状況 | 問題に対する関与度が高い場合や、意思決定の重要性が高い 状況で、中心ルートが選択されやすくなります。 (例)高額商品の購入、重要なキャリア選択、政治的な意思決定など。 |
この内容を踏まえ、中心ルートで説得する際は次の様なコンテンツが効果的です。
ELMの中心ルートで説得しやすいコンテンツとは
科学的なデータや統計に基づいた製品説明
製品の有効性や安全性を客観的なデータで示すことで、論理的に納得できます。
専門家による証言やレビュー
信頼できる専門家の意見や、客観的なレビューを示すことで、製品の品質や性能を裏付けることで、説得力が高まります。
メリット・デメリットを公平に提示
製品のメリットだけでなく、デメリットも正直に伝えることで、情報の信頼性を高め、熟慮を促します。
論理的な議論やディベート
複雑な問題や、多角的な視点が必要なテーマについて、論理的な議論やディベートを通じて、理性的に判断を促します。
ELMの周辺ルートとは
精緻化見込みモデルにおける周辺ルートでは、受信者がメッセージの内容を深く吟味せず、表面的な手がかりや経験則によって態度変容を引き起こします。
情報を受け取った時 | しっかり吟味せず、受け流します。 |
---|---|
態度変容の成否をにぎる鍵 | 態度変容の成否は、メッセージの内容よりも、情報源の魅力、専門性、好感度、メッセージの長さ、提示回数、音楽、色彩、雰囲気 など、周辺的な要素に左右されます。 |
態度変容の持続性 | 持続性が低く、後からのわずかな情報や状況変化によっても容易に変化 します。なぜなら、表面的な手がかりに頼って形成された態度であり、熟慮に基づいたものではないからです。 |
起こりやすい状況 | 問題に対する関与度が低い場合や、意思決定の重要性が低い 状況で、周辺ルートが選択されやすくなります。 (例)日用品の選択、衝動買い、娯楽的な消費、重要度の低い日常的な判断など。 |
この内容を踏まえ、周辺ルートで説得する際は次の様なコンテンツが効果的です。
ELMの周辺ルートで説得しやすいコンテンツとは
受信者の認知的努力を最小限に抑えつつ、好ましい印象や感情を瞬時に与えることに重点を置いたコンテンツにより、説得されやすくなります。具体的には、以下のような特徴を持つコンテンツが効果的です。
わかりやすいメッセージ
メッセージ受信者の認知処理負荷が低いコンテンツが好まれます。
文字よりも画像や動画、長文よりも短いコピー、複雑な論理展開よりもわかりやすいメッセージが説得しやすいコンテンツといえます。
感情的な訴求力が高いメッセージ
共感や親近感を抱かせるメッセージ、親しみやすいキャラクターなどを活用すると、感情的な訴求力ができます。
ポジティブな感情(楽しさ、喜び、幸福感、希望 など)を喚起するコンテンツは、好意的な態度形成に繋がりやすいです。
ネガティブな感情(恐怖、不安、危機感 など)は適度に喚起することで、問題解決への動機付けを行うことも可能です。ただし、不快感を与えすぎると逆効果になるため、倫理的な配慮と慎重な設計が必要です。
また、音楽や色彩などを活用して五感に訴えかけるのも、感情的な反応を引き出せます。
魅力的な周辺的手がかりを活用したメッセージ
まずは魅力的な人物を器用することで、その人物の好感度や人気、権威性、美しさなどを利用して、製品やブランドのみ力を高められます。
次に、専門家や業界団体の推奨、認証マークなどを掲載し、信頼性や安全性をアピールします。
さらに多くの人に支持されていることを示唆するものとして、人気ランキング、売上No.1、顧客満足度No.1などのデータを活用します。
最後に、割引、プレゼント、ポイント付与、期間限定キャンペーンなどの特典により購買意欲を高めます。
ヒューリスティック(経験則)に訴えかけるメッセージ
「高いものは良いもの」ヒューリスティック、つまり、高価格帯であることを強調することで、品質が高い、高級感がある といった印象を与えます。
「長いものは強いもの」ヒューリスティック、つまり、メッセージが長いこと自体を説得力があると錯覚させます。(ただし、長すぎると逆効果になる可能性も)
「専門家は正しい」ヒューリスティック、つまり、専門家の意見や推奨を強調することで、信頼性を高めます。
「人気のあるものは良いもの」ヒューリスティック、つまり、多くの人が支持していることを示すことで、安心感や社会的証明を与えます。
まとめ
精緻化見込みモデル(ELM)の2ルートごとにどんなメッセージだと説得されやすいかを紹介してきました。
あなたの会社のターゲットオーディエンスの状況に合わせて、効果的なメッセージを選択することが可能になります。
ぜひ説得効果を最大化することにチャレンジしてみてください。

お困りの際はぜひ一度ご相談ください。専門家と一緒に作業すれば、余計な遠回りをせずに成果へ近づけるはずです。