製造業のKBFとは~中小受託製造業のための購買決定要因を~

その提案、顧客の「決め手」に響いていますか?
製造業の営業・マーケティング担当の方にとって、「自社の製品・サービスをアピールしているのになかなか成約につながらない…」「価格競争に巻き込まれて技術力を正当に評価してもらえない…」という悩みはありませんか?
その大きな要因のひとつに挙げられるのが、KBF(Key Buying Factor:購買決定要因)の理解不足です。
- 技術力は高いのに、価格競争に巻き込まれてしまう。
- 製品の機能は充実しているのに、顧客にその価値が伝わらない。
- ウェブサイトからの問い合わせが少ない、あるいは問い合わせがあっても成約につながらない。
こうした課題は、顧客が本当に求めている「決め手」を的確に捉えていない可能性があります。本記事では、製造業のウェブ担当者や経営者の方に向けて、KBF(購買決定要因)とは何か、そしてどのようにKBFを特定し、自社のマーケティング・営業活動に活かせばよいのかを徹底解説します。
記事を読むメリット
- 製造業におけるKBFの具体例と、活用方法が分かる
- 顧客に「刺さる」提案ができ、成約率が向上する
- ウェブサイトからの問い合わせを増やすヒントが得られる
KBF(購買決定要因)とは? ── 顧客が「決める」理由
KBFの定義
KBF(Key Buying Factor)とは、顧客が製品やサービスを購入する際に、最も重視するポイント(決め手)となる要素のことです。
製造業の例でいえば、「精密な加工技術」や「短納期対応」「高い品質管理」などが代表的なKBFとなります。
KBFの重要性
顧客からみた自社のKBFを把握しておくことで、次のメリットがあります。
- 顧客のニーズに合った提案が可能に
KBFを理解すれば、顧客が「最も欲している情報」を提供できるようになります。 - 効果的なマーケティング活動
ウェブサイトや広告、展示会などでKBFを強調することで、顧客の目に留まりやすくなる。 - 問い合わせや引き合いの増加
ウェブサイトでKBFを明確に打ち出せば、興味を持った顧客が問い合わせしてくれる可能性が高まる。
KBFとペルソナ
KBFは顧客ごと(あるいはペルソナごと)に異なることに注意が必要です。
たとえば、
- 技術担当者は「加工精度」や「特殊技術の有無」を重視する
- 購買担当者は「コスト」や「納期遵守」を重視する
- 経営層は「投資対効果」や「企業の信頼性」を重視する
どの層がどの段階でどのような決め手を重視するかを、購買プロセス(情報収集→比較検討→選定→導入・評価 など)とも関連付けて考えることがポイントです。
製造業におけるKBF ── 徹底解剖!
本章では、製造業におけるKBFをできるだけ網羅的に挙げ、その定義や具体例、ウェブサイトでのアピール方法を整理しました。自社の強みを見直す際にも活用してください。
KBF | 定義 | 具体例 | ウェブサイトでのアピール方法 | 関連キーワード |
---|---|---|---|---|
技術力 | 製品・サービスを生み出すための技術的な能力 | – 高度な加工技術(精密加工、微細加工、難削材加工など) – 独自の技術、特許技術 – 設計・開発力 – 技術者のスキル・経験 – 保有設備(最新鋭、特殊設備など) – 対応可能な材質・加工サイズ・精度 – 技術提案力・問題解決能力 | – 技術紹介ページ – 事例紹介ページ – 技術ブログ – 会社概要ページ – トップページのキャッチコピー | 製造業 技術力、精密加工、微細加工、難削材加工、〇〇加工、技術ブログ |
品質 | 製品・サービスの品質や品質管理体制 | – 製品の精度・耐久性・信頼性 – ISO9001などの認証取得 – 検査体制(機器・方法・検査員) – 不良品発生率 – トレーサビリティ | – 品質管理ページ – 技術紹介ページ – 事例紹介ページ – お客様の声ページ – 会社概要ページ | 製造業 品質、ISO9001、検査体制、品質管理、不良品対策 |
コスト | 製品・サービスの価格、費用対効果 | – 製品価格・初期費用・ランニングコスト – 見積もりの透明性 – コスト削減提案 | – 価格表ページ – 事例紹介ページ(コスト削減事例) – 見積もり依頼ページ – 技術紹介ページ(コスト削減に繋がる技術) | 製造業 コスト、価格、見積もり、費用対効果、コスト削減 |
納期 | 製品・サービスの納期、納期対応力 | – 納期遵守 – 短納期対応力 – 生産能力(量産対応力) – 柔軟性(設計変更・仕様変更への対応) – 納期短縮事例 | – 納期情報ページ – 技術紹介ページ – 事例紹介ページ – お客様の声ページ – 会社概要ページ | 製造業 納期、短納期、短納期対応、生産能力、〇〇加工 納期 |
対応力 | 顧客の要望や課題に対する柔軟な対応力 | – 小ロット対応、多品種少量生産 – カスタマイズ対応(特殊な仕様、設計変更など) – トラブル発生時の対応力 – 技術的な課題に対する提案力 – 担当者とのコミュニケーションの取りやすさ – アフターサービス | – 技術紹介ページ – 事例紹介ページ – お客様の声ページ – 会社概要ページ – FAQページ | 製造業 対応力、小ロット、多品種少量生産、カスタマイズ、技術サポート |
信頼性 | 企業としての信頼性や実績 | – 創業年数・企業規模 – 過去の取引実績・顧客からの評判 – ISO9001、JIS Q 9100、ISO14001などの認証 – 表彰・メディア掲載 – SDGs/CSRへの取り組み、下請法への対応 | – 会社概要ページ – 事例紹介ページ – お客様の声ページ – 認証情報ページ – SDGs/CSRページ | 製造業 信頼性、実績、企業規模、ISO認証、〇〇業界 実績 |
その他 | 立地、担当者の対応、提案力、環境への配慮など | – 立地(アクセスの良さ) – 担当者の対応(専門性、迅速性、丁寧さ) – 提案力 – 環境への配慮(ISO14001など) | – 各関連ページ(会社概要、環境方針、問い合わせページなど) | 製造業 立地、〇〇県、担当者、提案力、環境 |
KBFをみつけるための5つの方法
製造業のKBFを見つけるためには、顧客へのヒアリングやデータ分析が欠かせません。
以下のアプローチを組み合わせることで、より正確なKBFを把握できます。
1. 顧客ヒアリング
既存顧客や見込み顧客に直接インタビューやアンケートを実施します。
- 「当社を選んでいただいた理由は何ですか?」
- 「競合他社と比較して、当社の強みは何でしょうか?」
- 「当社に改善してほしい点はありますか?」
実際に取引を決めたリアルな声が最も信頼できる情報源です。
2. 営業担当者へのヒアリング
顧客との接点が最も多いのは営業担当者です。
- 「お客様から、よく聞かれる質問は何ですか?」
- 「当社を選ぶ理由・選ばない理由として、どんな声を耳にしますか?」
- 「比較対象となる競合他社はどこで、当社との違いは何だと言われていますか?」
3. アンケート調査
メールやオンラインフォームを活用して、複数の顧客にまとめてアンケートを実施する方法です。
定量的な傾向を把握するのに有効です。
- 「製品・サービスを選ぶ際に、最も重視するポイントはどれですか?」(選択肢式)
- 「当社のサービスについてのご意見・ご要望をお聞かせください。」(自由記述式)
4. ウェブサイトのアクセス解析
Google Analyticsなどを使い、どのページがよく見られているかや、検索キーワード、離脱率・滞在時間などを分析します。顧客が何に興味を持っているかを推測する材料になります。
5. 競合分析
競合他社のウェブサイトやカタログ、展示会などの情報をチェックし、顧客が求めているポイントを推測する方法です。
- 競合他社の強みやアピールポイント
- 競合他社の顧客層や評判
- SNSやニュース記事での言及
KBFをウェブマーケティング・営業活動に活用する方法
1. ウェブサイト
- キャッチコピー
トップページのキャッチコピーやバナーに、KBFを意識したフレーズを盛り込みましょう。 - コンテンツ
KBFをテーマにした技術紹介ページや事例紹介ページ、お客様の声ページを作成します。 - SEO対策
KBFに関連するキーワード(例:「精密加工」「ISO9001 認証」「短納期 対応」など)を意識したコンテンツやメタ情報を設定し、検索エンジンからの集客を強化します。 - ウェブ広告
リスティング広告などでも、KBFを盛り込んだ広告文を使用することで、より効果的にターゲットを集客できます。 - 導線設計
KBFに関連する情報(事例紹介、品質管理ページなど)へスムーズに遷移できるよう、サイト内のリンクを最適化します。
2. 営業資料
- 会社案内・製品カタログ
KBFを反映させたキャッチコピーやグラフ・データを盛り込み、顧客に「見せたい情報」を明確化します。 - 提案書
顧客のKBF(コスト重視、納期重視など)に合わせて提案内容をカスタマイズすると、成約率が上がります。
3. 営業トーク
- 顧客のKBFをヒアリング
「今回は納期が最重要でしょうか、それともコストでしょうか?」など、最初の段階で優先度を確認する。 - 自社の強み(KBF)をわかりやすく
顧客の言葉に合わせた説明をすることで、「この会社は自分たちの課題を理解してくれている」と感じてもらえます。
4. 製品・サービス開発
- 顧客のKBFをフィードバック
「短納期対応」や「低コスト」など、ニーズが特に高い分野にリソースを投下し、新製品・新サービスとして開発する。 - 競合優位性の確立
競合が弱い領域のKBFを自社の強みにできれば、大きな差別化ポイントとなります。
まとめ:KBFを理解し、顧客に「選ばれる」企業へ
ここまで紹介したように、KBF(購買決定要因)は顧客が最も重視するポイントであり、これを正しく押さえることで、製造業のビジネスは大きく変わります。
- KBFを特定する
- 顧客や営業担当者へのヒアリング
- ウェブサイトのアクセス解析
- 競合分析 …などを組み合わせ、顧客の“決め手”を洗い出す。
- KBFを活用する
- ウェブサイトや営業資料、営業トークに反映
- 製品・サービス開発にも活かして、差別化を図る
KBFを意識したアプローチを行えば、顧客が「この会社なら信頼できそう」と判断し、問い合わせ・商談へスムーズに移行してくれる可能性が高まります。「なぜ自社が選ばれるのか?」を明確にすることは、価格競争に巻き込まれないためのカギでもあります。

まずは、自社の顧客が何をKBFとしているのか、改めて社内で共有してみましょう。KBFを元にウェブサイトや営業資料を見直すだけでも、顧客への伝わり方が大きく変わるはずです。
KBFの特定や、KBFを活用したマーケティング戦略についてさらに詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。
専門家と一緒に取り組むことで、より的確なアクションにつなげられます。