歯科医院の数はコンビニの数を超え、過当競争が起きています。(特に首都圏)予算が限られた小さな歯科医院でも、知恵と工夫で集客するためのWEB戦略を紹介します。
<質問>
歯科医院を営んでいます。
保険適用の診療が多く、他院と比べて特別なことをやっているわけではありません。
ホームページに掲載する内容がなくて困っているのですが、何を書けばいいのでしょうか。
<回答>
歯科医院は、事業所数が多く、色んなエリアで過当競争が起きています。多くの事業所が患者獲得のために広告宣伝活動を行っていますが、WEBではどのように考えるべきなのでしょうか。
「普通の歯医者さん」が集客する戦略は、大きく分けて2つあります。
集客戦略① 宣伝費をかけ、露出を増やす戦略
1つ目は、広告宣伝費をかけて露出を増やす事。駅前の看板・WEB広告などがそれに当たり、歯科医院の認知と浸透を高めることが目的です。競合の他院よりも良い場所に良いデザインの看板を確保することが肝になります。
予算が限られた場合は、地域を絞り集中的に広告に資本を投下すると、比較的高い効率で集客できます。
(参照記事:地域を絞って、低予算で集中的に集客する5つの方法)
しかしながら、この戦略のデメリットは、コストがかかり、他院と競るポイントも費用になりがちです。同じエリアにより資本が強い歯科医院があると、なかなか勝機がつかみづらいという難点があります。
集客戦略② 差別化ポイントを作り、ターゲットに浸透させる戦略
そこで小さな歯科医院にお勧めしたい2つ目の戦略は、他院との差別化を作り、浸透させる事です。
予算が小さいところは、知恵と工夫で勝負です。
「他院と比べて特別なことをやっていない」事業所でも、どうにかして「差別化」していくかという事に尽きます。
今回はこの2つ目の「差別化ポイントを作り、ターゲットに浸透させる事」をメインに話を進めていきます。
まずは、マーケットの全体像を見渡してみる
歯科業界を1つのマーケットと考えた時、現在では様々な治療を受けられるように多様化しています。
・保険適用の虫歯治療
・保険適用外のインプラント
・保険適用外のホワイトニングや矯正治療
保険適用では、虫歯治療の後に金属の詰め物や入れ歯を使用します。一方、保険適用外の診療では、セラミックの詰め物や義歯、インプラントをして、審美や耐久が良くすることが出来ますが、その分費用も高くなります。
価格が高いことが差別化ではない
差別化は、価格を高くすることではありません。
他院ではやっていない事、強く押し出していないことを、訴求することです。
他院では叶わなかった、患者の「ニーズ」や「ウォンツ」を満たすことこそが差別化です。
マーケットから見た、自社のポジションは?
今回のケースでは、保険適用の診療が多く、特別に自由診療を推し進めているわけではないようです。
価格も業界全体で見ると低く、また、品質も自由診療と比べると低めというポジションにおくことができます。
ポジショニングをデザインに投影する
色味や写真の選び方により、品質や価格感を伝えることができます。
まず、色味は、その選び方によって、高級感やお得感を表現することができます。(詳しくは「サイトの配色を決める時に抑えておきたい色の特徴とWEBデザイン」参照)
また、写真のクオリティーは、それがそのままクラス感となって、見る人に伝わります。
カメラマン撮影のハイクオリティな写真は、ハイクラスを印象づけ、一方で、素人が撮影したクオリティの写真は、庶民的なクラス感を印象づけます。
地域の特徴を理解しておく
首都圏のような過当競争エリアの場合、例えば徒歩10分以内、車で10分以内のエリアは、どのような住民が多いのかを念頭に置いておきます。例えば、
・昼間はビジネスマンが多いオフィスエリア
・平日昼間は女性・子供が多く、休日は家族が賑わう住宅エリア
例えば、オフィスエリアには、
医療費にお金をかけない20~30代の若手サラリーマンもいれば、費用を投資と考える経営者もいます。
また、住宅エリアには、
自分の医療費にお金をかけない子持ちの母親がいれば、嫁入り前で医療費にお金をかける若い女性もいます。
ポジショニング×地域特性から考える「差別化ポイント」
差別化は、他院との違いを表現することです。技術で差別化できる医院はほんの一握りです。しかし、「誰の」「どんなニーズに応える」限られた状況下で、他院を凌駕することは出来るでしょう。
例えば、「サラリーマンの」「昼休み中に最短で治療したい」ニーズの方には、時間厳守で保険診療をすることが強みになるでしょう。
例えば、「乳幼児のママの」「子供を連れて治療したい」ニーズの方には、個室でベビーカーも入れる診療室が強みになりますし、土日も診察している場合は、働くママも集客しやすくなります。
このように、「差別化ポイント」を踏まえることで、医院の特徴をつけることができます。
差別化ポイントは、広告もリアルも一貫して徹する
言うまでもなく、差別化ポイントを一貫して患者に伝える姿勢をとることが大切です。
万が一、ホームページで期待したことが、医院では遂行されなかった場合、その患者は二度とその医院に行かなくなります。それだけでなく、WEBに口コミとして書かれた場合は、第三者もそれを読むことになり、悪評が拡散する事態になります。
差別化ポイントを作りだすことは大事ですが、飽くまでリアルのサービスと結び付けて、一貫できる内容にしましょう。
差別化とは、価値を創りだすこと
今回、差別化ポイントをいかにWEBで表現するかを見てきましたが、差別化とは価値を創りだすことです。
万人にとって価値を創りだすのは難しいかもしれません。
しかし、
・乳幼児連れで行きたい母親に
・昼休みの間に行きたいサラリーマンに
が安心していけるという価値を創り、発信していることに他なりません。
過当競合がひしめく業界は、歯科医院以外にもたくさんあると思いますが、このようにターゲットを絞って広告展開して活路を見いだすケースが多くあります。
差別化した医院の成長フェーズ
いったん、「母親向け」に差別化して集客を始めた場合、男性向けや子供向け、高齢者向けへの集客が弱まってしまうのではないかという質問をよせられることがあります。
WEBでは「サテライトホームページ」という考え方があります。つまり、「母親向けホームページ」「男性向けホームページ」「高齢者向けホームページ」など、ホームページをそれぞれ作成して横展開していくことが可能です。
ある限定ターゲットへの集客基盤を築いたら、次のターゲットへの集客基盤を築いていく、このような積み重ねをして、WEBマーケティングを考えていくと良いと思います。(下図内の第2・3段階)
この記事冒頭の<回答>に戻りますが、これは唯一の集客戦略ではありません。
広告宣伝費に予算を割けるようになった時、地域住民への認知や浸透を高める広告にシフトしていくと、より医院の成長につながると思います。(下図内の第4段階)